2015年2月12日木曜日

派遣社員の正規雇用化について

派遣労働者は様々な業種で働かれています。


労働者派遣に対する国の規制は厳しく、


同一の職場、同一の労働に対して3年を超えて派遣労働者を受け入れることはできません。
(専門26業務などの例外を除く)


これは、労働者を交代させても同様です。


3年を超えて派遣労働者を受け入れる場合、


派遣元と同一の労働条件にて、労働契約の申し込みを使用者がしたものと 「みなす」 。


法令上で「みなす」という用語が出た時は、当然にそうなるという意味です。



当然に「みなされる」ことを防ぐには、以下の方法があります。


① 3年を超える前に「3ヶ月以上の」クーリング期間を設ける。


② 3年を超える前に、労使間で労働契約を結ぶ。



クーリング期間3ヶ月というのは非常に中途半端であり、


そう都合よく3ヶ月だけ仕事が消えるわけではないため、


業務への影響を少なく抑えるには、現に働いてもらっている派遣労働者が優秀な場合、


使用者側から積極的に労働契約を「3年を超える前に」申し込むことが重要です。



なぜかと言いますと、


3年を超えた時点で、「派遣元との同一の条件で雇用契約を結んだもの」とみなされるため、


派遣労働者を受け入れている派遣先企業からすれば、


労働条件を自由に設定できないからです。


労働条件には賃金のほか、有期契約、無期契約、労働時間、休日など、多様なものがあります。


労働条件を労使互いの同意の下で契約を結ぶことが、労使にとってよい結果に結びつきます。





ところが、


派遣先から正社員として直接雇用を打診された場合、受け入れる派遣社員は4割であり、


非正社員として打診された場合は3割にも満たない・・・・


こんな実態が日本人材派遣協会の調査で判明したそうです。



理由として、


派遣労働者のままでいるほうが、労働条件が比較的よいとのこと。




派遣労働者など、不安定な雇用形態にいる人を保護し、


直接雇用に結び付けようという法整備が進む中、


派遣労働者という生き方を選びたいという人もいるようです。



2015年1月22日木曜日

労働時間を管理する

昨今の報道等で、一定の年収要件を満たした専門職に対し、


裁量労働制を認めるかどうかの議論がなされているとのこと。


現在の労基法では、労働者の健康を守るために、


労働 「時間」 に関して様々な規制が多く定められています。


(もちろん、時間だけではないのですが)


戦後の労基法は戦前の工場法が基になっていることもあり、


工場労働者の労働時間管理には非常にマッチした制度になっています。


ところが、サービス産業が発達した現在では、知的労働者を中心に、


労働時間による管理が必ずしも適切でない場合も確かにあります。




現行法においても、例えば管理監督者や専門業務型、企画業務型などがありますが、


その適用要件において、多くの労働者が対象と言うわけではありません。



一日8時間、週40時間の例外として、現行で最も多く使われているのが、


変形労働時間制です。


たまには画像を入れて気分を変えてみようと思います。




変形労働時間制については、様々な制約がありますので、


導入は慎重になさってください。


2015年1月9日金曜日

自宅での医療を確保する

高齢者が急増し、病床数の増加が期待できない時代においては、


好むと好まざるとにかかわらず、自宅での看取りを検討する必要性が出てきます。


自宅での看取りを行うためには、


自宅においても医療を受けられる体制が整っていることが肝要です。


医学的管理や注射、点滴の実施など、直接医療を提供できるようになるという理由のほか、


死亡診断書をスムーズに書いてもらえるという社会的な理由があります。



自宅で人が死亡する場合、持病をもっていない場合、不審死とみなされ、


警察が関与し、死体検案書が発行されることとなります。


自宅で「本人」を発見した人は「第一発見者」であり、警察からの事情聴取が行われます。


勤務中の時間を割いて長時間拘束されるため、影響は甚大であり、


「本人」も様々な死因の可能性が考えられるため、詳細に調べられることになります。


持病を持っていたとしても、自宅での医療を受けられる体制が整っていなかった場合、


不審死とされる可能性は限りなく高くなります。


一方で、日頃から訪問診療など自宅で医療を受けられる体制が整っている場合、


介護・看護スタッフや家族によって発見された「本人」は、


医師への連絡により速やかに「死亡診断書」が発行され、「本人」も家族も


介護関係者も、厳粛な看取りが可能になるわけであります。




それはそれとして、医師が自宅を訪問し診療する場合、


「訪問診療」と言ったり、「往診」と言ったりします。


「訪問診療」とは、計画的に実施されるものであり、


「往診」とは患者や家族の求めに応じて実施されるものです。


また、「訪問診療」とは原則計画的に行われ回数にも制限がありますが、


末期がん患者など一定の要件を満たした場合、週4回以上の往診なども可能です。


また、自宅までの距離が半径16km以内であることが必要です。



他にもいろいろな要件がありますが、診療報酬を調べる時に介護報酬との比較をすると、


いろいろ興味深いと思います。


2014年12月4日木曜日

介護休業制度における「要介護状態」

介護休業において、「要介護状態」という語句の意味とは、


いわゆる「要介護〇」といった、公的介護保険における介護認定の区分ではありません。


「負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある」


これが、介護休業制度における「要介護状態」です。



では、誰がその「要介護状態」を判断するのでしょうか。


厚労省が、介護給付申請の際に会社が労働者に求める「申出書」の様式例を示しています。


会社がハローワークに出す介護休業給付支給申請書は所定の様式が定められています。


いずれも、例えば介護保険証の写しを添付しろとか、


医師の証明書を出せという文言はありません。



つまり、労働者からの申し出に基づき、会社が判断するのです。








介護が必要な家族を抱えた会社員が、



「要介護状態」とは何ですか?と、



介護休業制度について知らない介護関係者に聞いてしまうと、



まったく的外れな回答が返ってきますので、要注意を。




2014年11月19日水曜日

同意書とリスク管理

本日、福祉事業あんしんサポートネットのメンバーとして、


介護労働安定センター広島支部のセミナーにて講演をしてまいりました。


主に代表の弁護士が講義し、私は進行とサポート的な役割です。


介護業界で起きる様々なトラブルやクレームを私が紹介し、


法的にはどのように考えていけばよいかを弁護士がアドバイスするという形式です。





「看取り」対応や重度者の受け入れをはじめ、介護現場においては、


少々困難ともいえるサービス提供を求められることが少なくありません。


そのような中で、事故が起きなかったにしても、実際に亡くなられたケースに


なった場合、施設側の過失責任を求められることも少なくありません。


その場合、「念書をとっておけばよい」「同意書を取っているから大丈夫」という


考えを持つかもしれませんが、それは意味がありません。




施設は、安全にサービスを提供する義務があるため、


その場その場の急変時に応じた同意でないとなりません。


そのため、例えば看取りなどの場合、あらかじめ包括的な同意を書面で取った上で、


施設側の対応を詳細に記録しておく必要があります。


先日のグループホーム外部評価で拝見したケースなどは良くできており、


看取り同意書を定期的に更新する仕組みがあるうえで、


同意書の裏面に職員の対応した経過記録、利用者の状態、家族とのやりとりを


詳細に記したものになっていました。




利用者本位など、福祉の精神は経営に必要でありますが、


決して親切心や良心だけでは経営はできないということになります。


2014年11月18日火曜日

介護休業の拡大へ

育児・介護休業法では、要介護状態になった家族一人あたり


通算93日まで介護休業を取得することができます。


介護休業の規定ができたのが1995年であり、


これは介護保険制度がスタートした2000年よりも以前の話になります。


ですので、現在の介護認定区分である「要介護1~5」に認定される必要は、


必ずしもありません。


「要介護状態」と言っても、客観的な線引きが必ずしも明確であるわけでなく、


会社の就業規則等に介護休業の規程が存在しても、


必ずしも適切に運用がなされているとは限りません。



厚生労働省は、2016年の通常国会に提出することを目処として、


介護休業期間の延長や短期間の介護休業取得ができやすいように


制度を見直すべく検討に入ったとのことです。


要介護高齢者の増加と、特養などの施設ベッドの頭打ちなどで、


在宅介護が推進される一方で、


仕事と介護の両立困難など、離職を余儀なくされる労働者の増加が


社会問題になりつつあります。


国の試算では、年間約10万人が家族介護を原因に離職するといわれています。




2014年11月12日水曜日

任意後見制度の留意点

成年後見制度の一つに、任意後見制度というものがあります。


法定後見制度と任意後見制度の細かい説明は省くとして、


任意後見制度のメリットは、自分の意志で後見人を選べることにあります。


というのも、法定後見 (後見・保佐・補助) については、


基本的に誰が後見人になるか分からないのです。



確かに、法定後見を申立てする際には、後見人候補者を立てることができます。


しかし、後見人候補者を立てたからといって、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。


後見人等を選ぶのは、あくまで家庭裁判所だからです。


また、自分自身が後見相当の精神状況になってしまった後では、


自分の意志で後見人を選ぶことは、事実上不可能です。


家族や福祉関係者が、 「この人がいいよ」 ということで後見人候補者を立てたとしても、


本人の、自分の意志とは言い難いからです。



その点、任意後見制度においては、


自分が信頼をおける人に、財産管理や身上監護をお願いすることができるというわけです。




もちろん、任意後見制度にも問題点がないわけではありません。


「任意後見受任者」を決めて公証役場で公正証書を作成したとしても、


当事者同士が仲違いする可能性があります。人と人との友好関係ですので、揺れ動きます。




また、「任意後見受任者」は法務局に登記されることと、


当事者同士がどのような契約を結んでおくか(事務委任契約など)を


詳細に決めておく必要があることと、正しく制度を理解しておくことが必要なのです。