2014年11月19日水曜日

同意書とリスク管理

本日、福祉事業あんしんサポートネットのメンバーとして、


介護労働安定センター広島支部のセミナーにて講演をしてまいりました。


主に代表の弁護士が講義し、私は進行とサポート的な役割です。


介護業界で起きる様々なトラブルやクレームを私が紹介し、


法的にはどのように考えていけばよいかを弁護士がアドバイスするという形式です。





「看取り」対応や重度者の受け入れをはじめ、介護現場においては、


少々困難ともいえるサービス提供を求められることが少なくありません。


そのような中で、事故が起きなかったにしても、実際に亡くなられたケースに


なった場合、施設側の過失責任を求められることも少なくありません。


その場合、「念書をとっておけばよい」「同意書を取っているから大丈夫」という


考えを持つかもしれませんが、それは意味がありません。




施設は、安全にサービスを提供する義務があるため、


その場その場の急変時に応じた同意でないとなりません。


そのため、例えば看取りなどの場合、あらかじめ包括的な同意を書面で取った上で、


施設側の対応を詳細に記録しておく必要があります。


先日のグループホーム外部評価で拝見したケースなどは良くできており、


看取り同意書を定期的に更新する仕組みがあるうえで、


同意書の裏面に職員の対応した経過記録、利用者の状態、家族とのやりとりを


詳細に記したものになっていました。




利用者本位など、福祉の精神は経営に必要でありますが、


決して親切心や良心だけでは経営はできないということになります。


2014年11月18日火曜日

介護休業の拡大へ

育児・介護休業法では、要介護状態になった家族一人あたり


通算93日まで介護休業を取得することができます。


介護休業の規定ができたのが1995年であり、


これは介護保険制度がスタートした2000年よりも以前の話になります。


ですので、現在の介護認定区分である「要介護1~5」に認定される必要は、


必ずしもありません。


「要介護状態」と言っても、客観的な線引きが必ずしも明確であるわけでなく、


会社の就業規則等に介護休業の規程が存在しても、


必ずしも適切に運用がなされているとは限りません。



厚生労働省は、2016年の通常国会に提出することを目処として、


介護休業期間の延長や短期間の介護休業取得ができやすいように


制度を見直すべく検討に入ったとのことです。


要介護高齢者の増加と、特養などの施設ベッドの頭打ちなどで、


在宅介護が推進される一方で、


仕事と介護の両立困難など、離職を余儀なくされる労働者の増加が


社会問題になりつつあります。


国の試算では、年間約10万人が家族介護を原因に離職するといわれています。




2014年11月12日水曜日

任意後見制度の留意点

成年後見制度の一つに、任意後見制度というものがあります。


法定後見制度と任意後見制度の細かい説明は省くとして、


任意後見制度のメリットは、自分の意志で後見人を選べることにあります。


というのも、法定後見 (後見・保佐・補助) については、


基本的に誰が後見人になるか分からないのです。



確かに、法定後見を申立てする際には、後見人候補者を立てることができます。


しかし、後見人候補者を立てたからといって、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。


後見人等を選ぶのは、あくまで家庭裁判所だからです。


また、自分自身が後見相当の精神状況になってしまった後では、


自分の意志で後見人を選ぶことは、事実上不可能です。


家族や福祉関係者が、 「この人がいいよ」 ということで後見人候補者を立てたとしても、


本人の、自分の意志とは言い難いからです。



その点、任意後見制度においては、


自分が信頼をおける人に、財産管理や身上監護をお願いすることができるというわけです。




もちろん、任意後見制度にも問題点がないわけではありません。


「任意後見受任者」を決めて公証役場で公正証書を作成したとしても、


当事者同士が仲違いする可能性があります。人と人との友好関係ですので、揺れ動きます。




また、「任意後見受任者」は法務局に登記されることと、


当事者同士がどのような契約を結んでおくか(事務委任契約など)を


詳細に決めておく必要があることと、正しく制度を理解しておくことが必要なのです。


2014年11月6日木曜日

75歳以上の医療保険料の見直し

久しぶりの更新です。


政府が2015年に法改正を目指す医療保険制度改革案の中で、


75歳以上の医療保険料についても負担増が検討されております。


現在の制度では、75歳になると後期高齢者医療制度の対象となり、


個人で公的な医療保険に加入することとなります。


それまで家族の扶養に入っていたような方は、保険料負担はありません


でしたが、75歳以降は、家族に扶養されていても関係なくなります。


ただし、保険料の軽減措置として、低所得者とともに、75歳までに


扶養されていたような方には、最大9割の保険料負担軽減があります。


75歳以上の人口約1600万人のうち、この対象者は174万人あります。


要は、ここに負担増を求めるというものです。


2年間の経過期間(本来保険料の5割)を経て、3年目以降は一般的な


保険料負担基準に基づいて計算されるため、最大で1500円の負担増に


なる方もありそうです。




ここで「世帯分離」について。


福祉サービス等の負担軽減を目的として行う「世帯分離」ですが、


福祉関係者も薦めるケースもあろうかと思います。


扶養されていた人が受ける保険料軽減措置がなくなることにより、


世帯分離を行うデメリットが一つ消えたことになります。



とはいえ、2015年の介護保険法改正により、


世帯分離による福祉施設の食費居住費の減免にもメスが入りそうな予感で、


福祉関係者のアドバイスも注意が必要な気がします。