2015年5月12日火曜日

労働者派遣のゆくえ


 平成27313日に閣議決定し、国会に提出された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」では、労働者派遣に関する様々な改正が盛り込まれている。

 今回の派遣法改正では、専門26業務と、それ以外の自由化業務との区分は解消されます。専門26業務とは、専門性が高く派遣制限期間の制約を受けない業務(事務用機器操作や財務処理等)のことでしたが、一般事務との判別が難しく、行政指導が厳格化された時期もあったこともあいまって、あまり実用的ではありませんでした。

 今後は、同一の組織単位(課など)において、同一の派遣労働者を、3年を超えて受け入れてはならないという「個人単位」と、同様に、3年を超えて同一の事業所において受け入れてはならないという「事業所単位」の派遣制限期間という区分になります。

 また、派遣先においては、同一の事業所において派遣労働者が途中で変わったとしても、3年を超えて、これを受け入れてはならないという原則があるものの、過半数組合や過半数代表者の意見を聴取すれば、その延長が認められ、延長回数に制限はないとされています。さらに、過半数組合等が前述の意見聴取に対し異議を述べた時は、延長の理由や対応方針等について、派遣先は説明義務を果たすという手順を踏むこととなります。これにより、 「3ヶ月間のクーリング期間を挟む」といった、無理難題は解消されるものと思われます。

 「個人単位」の制限においても、受け入れ先の組織単位(課など)を変えることにより、3年を超えて派遣労働者として就業を継続することは認められています。ただし、「事業所単位」の派遣制限期間に抵触しないことに注意が必要です。

 このように、期間制限違反が「直接雇用のみなし規定」と関連付けられる恐れが大幅に低下することとなり、労使間の無用な紛争が防げることとなりそうです。



2015年5月10日日曜日

その訪問、どの公的保険適用ですか?

 前回、訪問看護の話題が出ましたので、関連する話をします。

 訪問看護の提供には、「訪問看護ステーション」と「医療機関」とがあり、診療報酬と介護報酬の両方の公的保険の給付が行われます。対象者(患者)が要介護認定を受けていれば原則、介護保険適用ですが、要介護認定を受けていないなど、医療保険適用の訪問看護は、原則11回、週3日まで、一人の対象者に対し一ヵ所の訪問看護ステーションに限られる形で利用できます。

厚生労働大臣が定める20の疾病等(特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等)の状態である場合は医療保険による適用となり、急性増悪等で主治医が頻回の訪問看護を一時的に行う必要性のため、特別訪問看護指示書が発行された場合も、14日間に限り医療保険の訪問看護が提供されます。

 特別指示書による医療保険適用の訪問看護は、急性増悪期のほか、退院直後、終末期なども含まれます。特別指示書は、原則月1回の発行ですが、気管カニューレを使用していたり、真皮を超える褥瘡の場合には、月2回発行できます。

 また、前述の20の疾病等や特別指示書による医療保険適用の場合は、1日複数回の訪問や、週4日以上の訪問が可能となるほか、複数の訪問看護ステーションから実施でき(20の疾病等の場合は3ヶ所、特別指示書の場合は2ヶ所)、グループホームや特定施設に入居する患者に対しても提供できます。

 さらに、末期の悪性腫瘍の場合、特養やショート利用中の利用者に対しても、医療保険による提供が可能です。そのほか、精神科訪問看護も医療保険の適用となりますが、ここでは省略します。

 介護認定を受ける利用者が訪問看護を利用する場合、しばしば問題になるのが「区分支給限度額」の問題です。医療保険が適用される訪問看護を組み合わせることで、他の介護保険サービスを利用できる余裕が生まれます。

 

 

 

2015年5月8日金曜日

その宿直業務は、労働時間ですか?


老人ホームなどの社会福祉施設において、時々物議を醸すのが「宿直」の取扱いについてです。労基法第41条では、「監視又は断続的労働に従事する労働者」は労働時間等の規程が適用除外になり、労基則23条で「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」でも1日8時間、週40時間を超えた労働が可能ですが、これは行政官庁の許可が必要です。

社会福祉施設等の業務には、通達が既に出されています(昭49.7.26基発27号、平11.3.31基発168号)。例えば、入居者の就寝後は原則として労働から離れて睡眠が取れる場合、そこから起床して着衣などの介助を始めるまでの時間帯を「宿直勤務」とし、労働時間の規制が免除されます。途中で検温等の「軽度かつ短時間」で行われる業務であれば、宿直業務の一環と見なされますが、「身体介護などの作業」は軽度ではなく、宿直業務には当たらないとされています。

では、24時間対応が必要な訪問看護などの事業場で、労働者に携帯電話を持たせ、利用者からの緊急通報に対応できるような状況であればどうでしょうか。

具体的なケースについては、専門家に相談されることをお勧めします。

2015年5月6日水曜日

その会議は、労働時間ですか?


 岐阜労働局で取りまとめられた、平成26年度の介護事業場への監督結果では、割増賃金の不払いによる違反が多く、37.8%の事業場で法違反が発覚しました。これは、残業申請書とタイムカードの記録との不整合があり、具体的には、介護時間のみ業務時間とし、業務として行った会議時間を残業としていなかったものでした。

 介護事業場においては、会議や勉強会の開催など、それが果たして業務なのか任意なのか不明確になることも多く、行政からの是正指導となる以外に、労使紛争の原因となることもありますので、要注意です。


2015年4月23日木曜日

ホームページ刷新

当事務所のホームページを刷新しました。


「オフィスたいよう 西田事務所」へのリンクはこちら

よりいっそう、私の仕事が分かりやすくなったと自画自賛しております。

これからも、よろしくお願いします。




2015年4月20日月曜日

障害者職場復帰支援助成金

平成28年度にひかえた障害者雇用促進法の改正を見据え、


厚労省が現在制度を構築しつつあるのが、


障害者職場復帰支援助成金であります。




難病やうつ病の発症、事故などにより、3ヶ月以上の長期にわたる休職を余儀なくされ、


職場復帰にあたり、雇用継続のため


職場適用対策が必要となった場合に支給するというもの。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000080252.pdf


①障害と能力に合わせた職務開発
②新たな業務に就くための能力開発
③うつ病者への1ヵ月以上のリワーク支援の提供

大企業に最大50万円、中小企業に最大70万円



障害に対する正しい理解と支援する環境が何より必要です。


特に、職場復帰の際は周囲のサポートが無くてはならないし、


的外れや過剰など、サポートそのものの問題も起こり得ます。


社会的にハンデを持つ人が増加している現代だからこそ、


適切な支援のための理解と教育が必要ですね。



2015年4月11日土曜日

処遇改善加算のゆくえ

介護保険の処遇改善加算の取扱いについて。


介護報酬改定の情報の中、マスコミを通じ、
介護職員の給与が1万2千円上がるという報道が出たのが、


去年の暮れから今年に入ってから。


実際の報酬改定の状況が判明し、一律に基本報酬が減額されているのが判明したのが、


今年の2月。


処遇改善加算の加算率も同じくして判明したにもかかわらず、
実際に算定するための書類や方法が、国から都道府県等に通知されたのが、


3月31日。


一部の都道府県も情報を小出しに出すなど細かな動きがあり、
具体的な提出書類について定めを公表したのが、


4月6日の午後。


それで、提出期限は4月15日となっています。




提出用書類を見ても、分かりやすいようで分かりにくい文面と共に、


どうにでも解釈できそうなキャリアパス要件や、職場環境等要件など、


事業所を混乱させるようなものばかりであり、


地方分権の流れの中で、都道府県ないし政令指定都市に運用を委ねているとはいえ、


どの自治体も国の示した参考様式に右習えの状態であります。




自治体はそんな状況である中、平成27年度から導入された、新しい総合事業は、


要支援認定者向けの訪問介護、通所介護のサービス提供主体を、


ボランティア等のインフォーマル団体にも門戸を広げ、


運用を自治体に委ねようというものです。






個人的な立場としては、


あまり制度を複雑化させず、シンプルな制度設計が行える官僚こそ、


真に賢明だと言えるのではないでしょうか。