2013年12月24日火曜日

認知症高齢者の鉄道事故

認知症高齢者の徘徊は、その全てを防ぐことは難しく、家族にとっても多大な負担を強いられます。

また、地域の中からも「なぜ施設に入所させない」などという、無理解ともいえる声を聞くのは家族であり、徘徊中に事故でも起こしたらどうなるかという心配にさいなまれながら過ごしているのが現状です。

その中で、徘徊高齢者が列車にはねられるという事故が発生し、大きな問題となっています。


以下は、公益社団法人認知症の人と家族の会からの抜粋です。



公益社団法人認知症の人と家族の会は、12月11日、名古屋地裁が8月9日に出した認知症男性による列車事故で家族に損害賠償請求を求める判決に抗議する声明を発表した。

判決は、2007年12月、要介護4の認知症の男性(91)が線路内に立ち入り、列車と衝突して死亡したことによって発生した損害額約720万円を遺族がJR側に支払うこと命じたもの。この判決については新聞や週刊誌でも大きく取り上げられ、疑義を述べる、または抗議する識者が多かったことを記憶する人も多いだろう。

今回、認知症の人と家族の会では、「認知症の人の徘徊は防ぎきれない」として、「家族に責任を押し付けた一審判決は取り消すべき」との見解を発表した。以下にその趣旨を紹介する。

■あまりに認知症と介護の実態を知らない判決に怒り
判決の理由として、「男性が家を出たのはデイサービスから帰宅した夕方であり、そのとき男性と二人暮らしだった妻がたとえ6,7分であったとしても居眠りをしていて気づかなかったことが注意義務を怠った」としている。また、男性の長男は、妻を両親宅の近くに転居させて介護に当たらせていたものの、自分も近くに住まなかったこと、民間の介護施設やヘルパーを依頼しなかったことなどが徘徊を防止する措置を講じなかったとして監督義務を怠ったとされた。

しかし、介護保険制度を使っても認知症の人を24時間、一瞬の隙もなく見守っていることは不可能で、それでも徘徊を防げと言われれば、柱にくくりつけるか、鍵のかかる部屋に閉じ込めるしかない。判決はそのような認知症の人の実態をまったく理解していない。
また、介護はそれぞれの条件に応じて行っているのであり、百家族あれば百通りの介護がある。判決は、そのような条件や努力を無視し、責めたてている。

認知症サポーターが440万人を超え、社会で認知症の人を支えようという時代に、今回の判決は、認知症への誤解を招き介護する家族の意欲を消滅させる、時代遅れで非情なものと言わざるを得ない。

■名古屋高裁で一審判決を取り消すべき
名古屋地裁の判決が前例になるなら、在宅で介護している家族の多くは在宅介護を放棄することになりかねない。それは「できるだけ住み慣れた地域で」という今日の流れにも反することになる。現在審理中の名古屋高裁において、一審判決が取り消されることを求める。

■認知症ゆえの行動により被害を受けた人に対する補償
認知症であるがゆえの固有の行動から生じた被害や損害については、家族の責任にしてはいけないというのが私たちの考えだが、その被害などは何らかの方法で賠償されるべきだ。例えば介護保険制度の中にそのための仕組みを設けるなど、公的な賠償制度の検討がされるように提案する。

■鉄道会社の対応と社会的な取り組み
鉄道事業会社において認知症の理解と事故防止のための対応が進むことを望む。また、認知症の人が社会で広く理解され、住民同士の協力で少しでも徘徊による事故が減少するように、企業、学校、地域などで認知症サポーターのさらなる養成や啓発活動が進むことを期待する。
「家族の会」もそのために今後も努力することを表明する。

◎公益社団法人認知症の人と家族の会

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