福祉の学習を進めると必ず出てくるのが、「応能負担」と「応益負担」の違いです。
応能負担とは、文字通り能力に応じた負担であり、
利用者の所得が高ければ高い利用料を支払い、
逆に所得が低ければ低い利用料を支払うというもの。
応益負担は、受ける利益に応じた負担であり、
利用者の所得に左右されずに、一定の利用料を支払うもの、
福祉の現場では、応能と応益が混在して、利用者から負担を求めています。
応能に代表されるものとして・・・・・
一定の老人福祉施設における食費と光熱費、養護老人ホーム(特養ではない)の利用料など
応益では・・・・・
介護サービス利用料の一割負担、通所事業所における食費など
障害者福祉サービスでは、一定の負担水準まで応益を求めるものの、応能の側面が強く、
高齢者福祉サービスでは応益の色彩が強く出るものの、生活保護や原爆手帳、重度障害などの条件付きでサービス利用料の減額があります。
以上は、福祉の勉強の講釈であり、一定の俯瞰的な見方であり、いよいよ本題に入ります。
今月から消費税率が8%に上がりましたが、
そもそも消費税とは、国民から所得に関係なく一律に徴収でき、
国や地方自治体にかかる行政や社会保障にかかるコストを一律に求めるという意味で、
応益負担と言えます。
一方で所得税とは、収入から一定の経費を差し引いた額に税率をかけて徴収されるため、
稼ぐ能力に応じた負担を求めるという意味で、応能負担といえます。
日本国のGDPは400兆円を越える中、国の税収はわずか40兆円しかありません。
日本国内で生み出される富から10分の1しか税を徴収できていないことの理由は置いておいて、
所得税や法人税が少ないことが国の財政圧迫の原因のひとつです。
グローバル化が進んだ現代では、海外などに生産や活動の拠点を移すことで、
日本国内の生産事業が低迷し、日本国内の産業が空洞化しています。
その結果、日本の多くの中小企業は赤字となり、法人税や所得税を徴収しづらくなっています。
応能負担である所得税を徴収することが難しくなっているのです。
一方で、政府はいかにして効果的に税を徴収するかを考えています。
そこで、行政や社会保障にかかるコストを、
国民に応分に負担してもらう(応益負担)仕組みとして、消費税を増税したのです。
物やサービスを消費することで国民の富が向上するのに、
消費税は文字通り、消費することに対しペナルティをかけるという仕組みです。
所得に関係なく徴収されるため、低所得者層ほど影響は甚大です。
話を福祉業界にもどしますと、
介護保険が導入された当時は応益負担が強調されましたが、
年月が進み制度が改正されるたびに、応能負担が復活しているのが現状です。
国民の所得は平等ではなく、貧富の差が存在する以上、
応益負担一辺倒では限界があるのです。
かといって、応能ばかりにすると、富裕層が苦情を言います。
努力して、苦労をしたから富裕層になったのだと。
そういう面は確かにあります。
ではどうすればよいか・・・
富裕層に対し税金を徴収することが困難だから、
貧困層からでも徴収が安易な消費税によって解決を図るのではなく、
世の中のお金の流れを全てガラス張りし、強制的に徴収する社会にするか、
富裕層が身の丈に応じた税金を支払うことで、富裕層にとってもメリットのある社会にする・・・
そういう発想が重要なのです。
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